Automation Dev Studio Chill Systems About
請求業務効率化の教科書|小さなチームのためのフロー設計とスプレッドシート活用術

請求業務効率化の教科書|小さなチームのためのフロー設計とスプレッドシート活用術

公開日: 2025年11月30日
更新日: 2025年11月30日

小さなチームや個人事業主に向けて、請求業務効率化の具体的な手順を解説。高価なSaaSに頼らず、スプレッドシートのデータベース化とノーコード自動化(Make等)を組み合わせ、請求漏れや入金確認の手間を劇的に減らすための設計図です。

請求業務効率化の教科書|小さなチームのためのフロー設計とスプレッドシート活用術

「今月の請求書、全部出したっけ?」
「あのスポンサー案件、入金確認したの誰?」

月末月初になると、チャットツールでこんな確認が飛び交い、本来やるべき制作や営業の手が止まってしまうことがあります。 もしあなたのチームがそんな状態なら、それは「能力」の問題ではなく、「仕組み」の問題です。

多くの小さなチームや個人事業主が、請求業務の効率化のためにクラウド会計ソフト(SaaS)を導入します。しかし、それでもミスやバタバタがなくならないケースは後を絶ちません。なぜなら、ツールを入れる前にやるべき「業務フローの整理」が抜けているからです。

ヨハク技研では、高価なシステムを導入する前に、まずは手元のスプレッドシートと業務フローを見直すことを推奨しています。

この記事では、2〜10人規模のチームに向けて、お金をかけずに実現する「請求業務効率化」の設計図を解説します。 スプレッドシートをデータベース化し、小さな自動化を組み込むことで、バックオフィス業務に「静けさ」を取り戻しましょう。

この記事で目指すゴール

本記事では、次の3点をゴールにしています。


  • 請求業務全体のフローを可視化し、どこが詰まっているかを把握できるようになる
  • スプレッドシートを「1行1請求」のデータベースとして整え、請求漏れ・入金確認漏れを防げるようにする
  • 小さな自動化(Make / n8nなど)と組み合わせて、請求業務効率化の土台をつくる

「請求業務効率化」を一度仕組みとして設計しておくことで、毎月の月末月初に感じていた不安やバタバタを、静かなルーチンに変えていきます。

なぜ小さなチームでも「請求業務効率化」にフロー設計が必要なのか

「人数が少ないから、声を掛け合えばなんとかなる」というのは危険な誤解です。むしろ、一人が複数の役割(営業兼経理など)をこなす少人数チームほど、「誰が何を覚えているか」に依存した運用になりがちです。 これは、脳のメモリを浪費し続ける運用であり、だからこそ小さなチームにも請求業務効率化が必要になります。ここでは、ツール導入の前にフロー設計が必要な理由を解説します。

このセクションでわかること

SaaSを導入しても現場のカオスが解消されない根本原因と、業務フローを可視化することで見えてくる「やめるべき業務」と「自動化できる業務」について解説します。

SaaSを入れたのに「請求漏れ」がなくならない理由

「freeeやマネーフォワードを入れたから安心」と思っていませんか? 確かに請求書の作成は楽になりますが、「いつ、誰に、いくら請求すべきか」という情報自体がチャットや口頭で散らばっていては、入力漏れ(=請求漏れ)は防げません。

請求業務効率化の本質は、請求書を作るスピードを上げることではなく、「請求すべき案件情報が、自動的に経理担当の手元に集まる流れ」を作ることです。

業務フローが見えれば「やめること」と「自動化すること」が決まる

業務フローを図に書き出すと、「この二重チェック、形骸化しているな」「この承認、結局誰も見ていないな」といったムダが浮かび上がります。同時に、「毎月同じような確認をしている箇所」や「通知だけ自動化できそうなポイント」も見えてきます。

ツール導入の前に、この「現状フローの棚卸し」をしておくことで、後からスプレッドシートやノーコード自動化と接続しやすくなります。

< 図解案: 営業 / 制作 / 経理 / クライアントの4レーンで構成された、受注〜検収〜請求〜入金までのスイムレーン図 >

失敗しない「請求業務効率化」のためのフロー可視化ステップ

「フローを可視化すると良い」と言われても、真っ白なホワイトボードの前で手が止まってしまうことはよくあります。では、具体的にどうやってフローを整理すればよいのでしょうか。請求業務は大きく4つのステップに分解できます。それぞれのフェーズで「何がトリガー(開始条件)か」を明確にすることが、請求業務効率化の第一歩です。

このセクションでわかること

請求業務を「受注」「検収」「請求」「入金」の4ステップに分解し、それぞれのボトルネックを特定する方法と、役割分担を整理するスイムレーン図の活用法を紹介します。

請求業務の4ステップとボトルネックの特定

請求業務の流れは、以下の4つに分けられます。あなたのチームはどこで詰まっていますか?


  1. 受注・契約
    案件が決まる(トリガー:契約書締結、発注書受領)
  2. 検収・確定
    仕事が完了し、請求金額が確定する(トリガー:納品完了、月末締め)
  3. 請求書発行・送付
    請求書を作り、相手に送る(トリガー:請求データ確定)
  4. 入金確認・消込
    口座を確認し、入金をチェックする(トリガー:入金予定日)

それぞれのステップに対して、


  • 「誰が責任者か」
  • 「どのツールで管理しているか(チャット / スプレッドシート / 会計ソフトなど)」
  • 「どんな情報が入力されているか」

を整理し、スイムレーン図として可視化してみてください。

< 図解案: 左から右に時間軸が流れ、縦に「営業」「制作」「経理」「クライアント」のレーンが並ぶスイムレーン図。各ステップでのタスクと情報の受け渡しが矢印で示されている。 >

スポンサー案件・広告枠ならではの「請求業務の流れ」

ニュースレターやメディア運営をしているチームの場合、スポンサー案件や広告枠の請求業務フローには独特のクセがあります。


  • 掲載期間(◯月第◯週の号)で管理される
  • 成果報酬型のスポンサーでは、請求金額が後から確定する
  • 再掲・継続スポンサーが多く、契約更新タイミングが混ざる

このような案件では、「案件管理」と「請求管理」を分けて考えるのがポイントです。案件管理シートには枠の販売状況や掲載スケジュールを、請求管理シートには請求・入金情報だけを記録し、共通のIDで紐付けるようにしましょう。

スプレッドシート活用で「請求業務効率化」を実現する管理表の作り方

フローが見えたら、それを管理する「場所」を整えます。小さなチームにとって、最も柔軟で強力なツールはGoogleスプレッドシートです。ここでは、請求業務効率化を実現するための、スプレッドシート運用の鉄則を解説します。

このセクションでわかること

「月別シート」の廃止や「1行1請求」の原則など、データベースとして機能する管理表の作り方と、ステータス管理による抜け漏れ防止テクニックを紹介します。

脱・月別シート。「1行1請求」のデータベース形式にする

もしあなたが「2025年11月請求分」というシートを作っているなら、今すぐやめましょう。月ごとにシートが分かれていると、月を跨ぐ入金管理や、年間売上の集計が困難になります。

正解は、「すべての請求データを1枚のシートに、1行1件で積み上げていく」ことです。

< 図解案: 「請求・入金管理スプレッドシート」のサンプルレイアウト。列:案件ID / 顧客名 / 案件名 / 請求日 / 請求金額 / 支払サイト / 入金予定日 / 入金日 / ステータス / メモ >

最低限押さえたい列構成

スプレッドシートの列は、最低限以下のような構成にしておくと、後からの集計や自動化がしやすくなります。


  • 案件ID(案件管理シートと紐付けるためのキー)
  • 顧客名
  • 案件名(スポンサー名や広告枠名)
  • 請求日
  • 請求金額(税抜 / 税込は列を分けるとベター)
  • 支払条件(例:末締め翌月末払い)
  • 入金予定日
  • 入金日
  • ステータス(「請求前」「請求済」「入金待ち」「入金済」「要確認」など)
  • メモ(イレギュラー対応や連絡事項)

これらを1行1件で記録していけば、「請求書管理に使うエクセル」としての役割だけでなく、「売掛金管理スプレッドシート」「入金管理スプレッドシート」としても機能します。

ステータス管理で「請求漏れ」「入金確認漏れ」を防ぐ

ステータス列を持たない請求書管理表は、ほぼ確実に抜け漏れを生みます。「今どの状態なのか」を一目で把握できる列を持つことで、確認作業を劇的に減らせます。

たとえば、次のようなビュー(フィルタ条件)を用意すると便利です。


  • 「ステータスが『請求前』で、検収済みフラグが立っている案件」=今月請求すべき案件リスト
  • 「ステータスが『請求済』で、入金予定日が過ぎている案件」=フォローが必要な案件リスト
  • 「スポンサー案件のみ(案件種別がスポンサー)」=スポンサー 管理請求の確認ビュー

こうしたビューを使えば、「この案件、請求したっけ?」とチャットを遡る時間が減り、「シートを見れば分かる」状態に近づきます。

詳細なテンプレート構成については、以下の記事も参考にしてください。 エクセル請求書管理表の正しい作り方

ノーコード自動化でさらに「請求業務効率化」を進める方法

スプレッドシートが整ったら、いよいよ「自動化」の出番です。プログラミングができなくても、Make(旧Integromat)やGAS(Google Apps Script)を使えば、請求業務効率化をさらに加速できます。

このセクションでわかること

スプレッドシートのステータス変更をトリガーにした「半自動化」の仕組みと、ヨハク技研が推奨する具体的な自動化レシピについて解説します。

人間は「判断」だけ。作業はロボット(iPaaS)に任せる

自動化のコツは、すべてを自動にするのではなく、「判断(ステータス変更)」だけ人間がやり、その後の「作業」をロボットに任せることです。


  • 人間
    内容を確認し、ステータスを「発行待ち」に変える
  • ロボット
    テンプレートに差し込み、PDFを作成し、Slackに通知する

このように、「人間の判断」と「機械的な作業」を切り分けることで、心理的な不安を抑えながら自動化の恩恵を得られます。

Make / GAS を使った代表的な自動化レシピ例

たとえば、次のようなレシピが考えられます。


  • スプレッドシートでステータスが「発行待ち」になったら、Makeが起動する
  • Googleドキュメントの請求書テンプレートに、案件IDをキーにして必要な情報を差し込む
  • PDFとして書き出し、Googleドライブに保存する
  • Slackの「#backoffice」チャンネルに、「◯◯社向けの請求書を作成しました」と通知する

ここまでを自動化しておけば、請求書の作成・保存・共有にかかる時間をほぼゼロにできます。メール送信については、Gmailの下書きまでを自動化し、最終送信は人間が行う「半自動」運用にしておくと安心です。

スポンサー・広告枠管理における「請求業務効率化」のポイント

ニュースレターやメディアが扱うスポンサー案件は、通常の受託案件と比べて「期間」「枠」「再掲」が絡み合いやすく、請求業務フローが複雑になりがちです。ここでは、スポンサー 管理請求に特有のポイントを整理します。

このセクションでわかること

ニュースレター広告やバナー広告など、スポンサー案件特有の管理項目と、案件管理シートと請求管理シートを分けて設計する考え方について解説します。

「案件管理」と「請求管理」を分ける

スポンサー案件では、「どの号に、どのスポンサーが、どの枠で出稿しているか」という情報と、「いつ、いくら請求したか・入金されたか」という情報を混ぜてしまうと、すぐにカオスになります。

そこで、


  • スポンサー契約・広告枠の情報を扱う「案件管理シート」
  • 請求日・金額・入金状況を扱う「請求・入金管理シート」

の2つに分け、共通の「スポンサー案件ID」で紐付ける設計がおすすめです。

スポンサー案件ならではの列項目

案件管理シートには、例えば次のような列を持たせるとよいでしょう。


  • スポンサー案件ID
  • スポンサー名
  • 商品・サービスカテゴリ
  • 掲載媒体(ニュースレター / ブログ / ポッドキャストなど)
  • 掲載枠(例:冒頭スポンサー / 本文内 / フッター)
  • 掲載開始日 / 掲載終了日
  • 課金形態(固定 / 成果報酬)
  • 契約金額 / 単価
  • 契約ステータス(交渉中 / 契約済 / 終了)

このスポンサー案件IDを、請求・入金管理シートの「案件ID」と揃えておくことで、「今月請求するスポンサー案件はどれか?」を簡単に絞り込めるようになります。

再掲・継続案件の「請求漏れ」を防ぐ

スポンサー案件では、「毎月同じ条件で継続」というケースが多くなります。このとき、チャットベースで「今月もお願いします!」とやり取りしていると、請求漏れのリスクが高まります。


  • 契約ステータスと掲載期間から、「今月掲載分」を自動で抽出するビューを作る
  • 「今月掲載分」で、請求ステータスが「請求前」のものを一覧表示する

といったビューを作っておくことで、毎月のスポンサー管理と請求を静かに回せるようになります。

よくある質問(FAQ)

Q. 請求書発行SaaS(freeeやMisocaなど)は不要ですか?

A. 不要ではありませんが、「規模」と「運用コスト」で判断するのがおすすめです。

月の請求件数が10〜20件程度であれば、スプレッドシート+簡単な自動化で十分に回ります。件数が増え、複数メンバーでの同時編集や承認ワークフローが必要になってきたら、SaaSへの移行を検討するとよいでしょう。

Q. 自動化すると誤送信が怖いです。

A.「半自動化」をおすすめしています。

勝手にメール送信するのではなく、「メールの下書き作成」や「SlackへのPDF通知」までを自動化し、最後の送信ボタンは人間が押す運用にすれば、心理的な安全性と効率を両立できます。

Q. 過去の請求データはどう移行すればいいですか?

A. 無理に全て移行する必要はありません。

「今月の請求分」または「今期の期首」から新しい管理表に切り替え、それ以前のデータは「アーカイブ(閲覧用)」として別ファイルで残しておくのが最も効率的です。

Q. インボイス制度や電子帳簿保存法にも対応できますか?

A. 基本的な要件は満たせますが、最終的な要件確認は顧問税理士や公式情報で行ってください。

スプレッドシート+PDF+クラウドストレージの組み合わせでも、多くの場合は要件を満たせますが、保存期間や検索性などの詳細は制度変更も含めて専門家の確認が必要です。

Q. 小さなチームでも外部パートナーに相談して大丈夫でしょうか?

A. むしろ「ひとり経理・ひとりバックオフィス」だからこそ、外部の視点が役に立ちます。

すべてを自分で抱え込むと、「どこから手をつければいいか」「何を諦めるべきか」が見えにくくなります。フローの棚卸しだけでも、第三者と一緒に行うことで、優先順位が整理されやすくなります。

まとめ:請求業務効率化で「つくる時間」の余白を取り戻す

請求業務効率化は、単に事務作業を速くするだけのことではありません。それは、チームの脳内から「あれ、忘れていないかな?」というノイズを消し去る作業です。


  1. 業務フロー図を描き、ボトルネックを見つける。
  2. スプレッドシートをデータベース形式に整える。
  3. 判断以外の作業を、少しずつ自動化する。

このステップを踏むことで、月末のバタバタは確実に減らせます。

請求業務効率化を“仕組み”として整えておくことで、「覚えておくための時間」ではなく、「つくる時間」「営業する時間」に余白を使えるようになります。

もし

自力での設計に行き詰まった
自動化まで一気に進めたい

と思ったら、いつでもヨハク技研にお声がけください。

ヨハク技研では、オンライン30〜45分の業務フロー健康診断(無料相談)を通じて、請求・入金フローの棚卸しと改善ポイントの整理を一緒に行います。ご希望があれば、4〜6週間で請求・入金まわりを整える小さな自動化パッケージのご提案も可能です。

また、チーム全体の業務フローを見直したい場合は、コンテンツビジネス全体の業務フロー設計図少人数チームの業務フロー見える化ガイド も参考にしてみてください。

→ ヨハク技研のスタジオページを見てみる

小さなチームの業務フローを一緒に整えませんか?

Tech & Chill Lab では、小さなメディアやコンテンツビジネス向けに、業務フローの棚卸しや、自動化フローの設計・実装をお手伝いしています。

「うちのフローだと何ができそうか」など、ライトな相談からでも大丈夫です。

著者 ヨハク技研

Author

ヨハク技研

「つくる以外の時間はもっと減らせる。」をテーマに、小さなチームや個人のための業務フロー設計・自動化・開発環境づくりをしています。Tech & Chill Lab では、スモールビジネスの裏側から個人開発、生活の仕組みづくりまで、「つくる時間を守るための設計図」を静かに共有しています。

このテーマの関連記事

請求書OCRで実現する「静かな」請求業務効率化|小さなチームのための自動化設計図

Automation

請求書OCRで実現する「静かな」請求業務効率化|小さなチームのための自動化設計図

小さなチームや個人事業主に向けて、請求書OCRを活用した業務効率化の全体像を解説。メールで届くPDFをAI-OCRで読み取り、kintoneやスプレッドシートへ連携する具体的なフロー設計と、失敗しない運用のコツを紹介します。

エクセル請求書管理表の正しい作り方|小さなチームの「抜け漏れ」を防ぐテンプレート構成案

Automation

エクセル請求書管理表の正しい作り方|小さなチームの「抜け漏れ」を防ぐテンプレート構成案

小さなチームや個人事業主に向けて、エクセルやGoogleスプレッドシートを使った「抜け漏れのない請求書管理表」の作り方を解説。月別シートの廃止やデータベース形式の採用など、実務で使える具体的なノウハウと自動化へのステップを紹介します。

業務フロー構築の教科書|少人数チームのための「書き方」と「見える化」実践ガイド

Automation

業務フロー構築の教科書|少人数チームのための「書き方」と「見える化」実践ガイド

少人数チームや個人事業主に向けて、業務フロー構築の具体的な書き方と見える化の手順を解説。複雑な図解ではなく、Notionやスプレッドシートを使った実践的な方法と、形骸化させない週次ミーティングのコツを紹介します。

\n