Automation
請求書OCRで実現する「静かな」請求業務効率化|小さなチームのための自動化設計図
小さなチームや個人事業主に向けて、請求書OCRを活用した業務効率化の全体像を解説。メールで届くPDFをAI-OCRで読み取り、kintoneやスプレッドシートへ連携する具体的なフロー設計と、失敗しない運用のコツを紹介します。
【3時間で完結】業務棚卸しのやり方|少人数チームのためのワークショップ設計図 <strong「みんな忙しそうだけど、具体的に誰が何を持っているのか分からない」</strong
MCP を 1 つ入れただけで、AI 駆動開発の TODO 管理が静かになった話 <strong「AI 駆動開発」なんて格好いい言葉を使っていますが、実態はもっと泥臭いものでした。</strong
エクセル請求書管理表の正しい作り方|小さなチームの「抜け漏れ」を防ぐテンプレート構成案 <strong「あれ、先月のあの案件、請求書送ったっけ?」</strong
小さなチームや個人事業主に向けて、エクセルやGoogleスプレッドシートを使った「抜け漏れのない請求書管理表」の作り方を解説。月別シートの廃止やデータベース形式の採用など、実務で使える具体的なノウハウと自動化へのステップを紹介します。
「あれ、先月のあの案件、請求書送ったっけ?」
「入金確認、誰かやった?」
月末月初、こんな会話で冷や汗をかいたことはありませんか? 小さなチームや個人事業主にとって、請求業務は「絶対にミスできないけれど、一番面倒な作業」の代表格です。
専用のクラウド会計ソフト(SaaS)を入れるほどではないけれど、今の「なんとなくのエクセル管理」では限界を感じている。そんな方は多いはずです。
「請求書管理エクセル」で検索して、テンプレートを探しながらなんとかやりくりしている──という方もいるかもしれません。
実は、請求書管理がカオスになる原因の多くは、ツール(エクセル)自体ではなく、 「管理表の作り方」 にあります。
私自身、かつては見た目重視の「セル結合だらけのエクセル」で管理し、集計ミスや請求漏れで痛い目を見た経験があります。しかし、「データベース思考」を取り入れて管理表を作り直しただけで、驚くほどミスがなくなりました。
この記事では、Tech & Chill Labを運営するヨハク技研が推奨している、
実務で本当に使える「エクセル・スプレッドシート請求書管理表」の作り方 を解説します。
今日から「月別シート」を卒業し、抜け漏れゼロの管理体制を作りましょう。
本記事では、次の3点をゴールにしています。
「まずはエクセル/スプレッドシートでちゃんと管理し、ゆくゆくは自動化も視野に入れたい」という小さなチームに向けた、実務寄りのガイドです。
多くの現場で目にする「使いにくい請求管理表」には、共通する特徴があります。
もしあなたの管理表がこれに当てはまっていたら、それは「抜け漏れ予備軍」かもしれません。ここでは、エクセル請求書管理で陥りがちな失敗パターンと、その解決策について解説します。
このセクションでわかること
「月ごとにシートを分ける」「セル結合を多用する」といったNG例を挙げながら、なぜそれが請求漏れや集計ミスにつながるのか、その根本原因を解き明かします。
「2025年11月」「2025年12月」と、月ごとにシートを分けていませんか? これは、人間の目には見やすいですが、データ管理としては最悪の手法です。
請求まわりだけでなく、「コンテンツ制作の表」「ニュースレターの表」「スポンサー管理の表」など、スプレッドシートが業務ごとに増殖していくと、全体像はどんどん見えづらくなります。
少人数チーム全体の「誰が何をやっているか」を見える化したい場合は、少人数チームの「誰が何をやっているか分からない」を解消する業務フロー設計図 もあわせて読むと、今回の請求フローがどこに位置づくかイメージしやすくなります。
「見出しを中央揃えにしたいから」とセル結合をしていませんか?
セル結合されたデータは、並び替え(ソート)やフィルタリングができません。
請求書管理表において重要なのは「印刷したときの美しさ」ではなく、 「未入金の案件だけを一瞬で絞り込める機能性」 です。
では、どのような形が正解なのでしょうか。
答えはシンプルです。
「1 枚のシートに、ひたすらデータを積み上げていく」こと。これを「データベース形式」と呼びます。ここでは、そのままテンプレートとして使える具体的な項目定義を紹介します。
このセクションでわかること
検索性・集計性を最大化する「1行1請求」の原則と、管理表に必須のカラム(項目)一覧を紹介します。これを真似するだけで、実用的な請求書管理表テンプレートが完成します。
新しい月になってもシートは変えず、新しい行を追加していくだけです。
「月」はシートで分けるのではなく、「請求月」という列(カラム)を作って管理します。こうすることで、フィルタ機能を使って「2025年11月」だけを表示することも、「株式会社A」だけを表示することも自由自在になります。
以下は、ヨハク技研が実際に使っているスプレッドシートのカラム構成案です。A列から順に設定してみてください。
先ほど触れた 「請求月」も独立したカラムとして入れています。
| 列 | 項目名 | 入力例 / 備考 |
|---|---|---|
| A | ID | 202511-001(年+月+連番など、一意の番号を振る) |
| B | 請求月 | 2025-11(もしくは 2025/11。請求日から数式で算出してもOK) |
| C | ステータス | 未請求 / 請求済 / 入金確認済(プルダウン推奨) |
| D | 取引先名 | ヨハク技研 |
| E | 案件名 | 11 月分コンサルティング費用 |
| F | 請求日 | 2025/11/30 |
| G | 支払期限 | 2025/12/31 |
| H | 請求金額(税抜) | 100,000 |
| I | 消費税 | 10,000(数式で自動計算) |
| J | 請求金額(税込) | 110,000(数式で自動計算) |
| K | 入金予定日 | 2025/12/31 |
| L | 入金確認日 | 2025/12/28(入金確認したら入力) |
| M | 備考 | PDF 送付済み / 請求書番号 〇〇 など |
※「請求月」は、最初は手入力でも問題ありませんが、 =TEXT(F2,"yyyy-mm")
のように「請求日」から自動で年月だけ取り出す数式にしておくとミスが減ります。
この表で最も重要なのは C列の「ステータス」 です。
このルールを徹底すれば、フィルタ機能で「請求済」かつ「入金確認日」が空欄の行を絞り込むだけで、「未入金リスト」が一瞬で作成できます。
図解案: フィルタ機能を使った未入金チェックのイメージ スプレッドシートのフィルタ機能で、ステータスが「請求済」のものだけを表示し、支払期限が過ぎているものを赤字でハイライトしている図。
ここで整理した請求フローは、ビジネス全体の業務フローの中の一部分にすぎません。
コンテンツ制作やニュースレター運用、スポンサー対応なども含めて「コンテンツビジネス全体の流れ」を一枚で押さえておきたい方は、コンテンツビジネスの業務フロー自動化設計図 を先に眺めてから、この請求フローが業務全体のどこに位置しているのかを確認してみるのもおすすめです。
ここまで「エクセル」と言ってきましたが、もし可能なら Google スプレッドシート への移行を強くおすすめします。
基本的な使い方はエクセルと同じですが、 チームで管理する場合のメリットが段違い だからです。
このセクションでわかること
ローカルファイル管理の限界と、Googleスプレッドシートならではの「同時編集」「履歴管理」の利便性について解説します。
エクセルファイルをチャットで送り合っていると、必ず「どれが最新版かわからない」問題が発生します。
一方で、Googleスプレッドシートなら、URLは常に一つ。全員が常に最新のデータを見ることができます。
また、「誰かが間違えて消してしまった」という事故も、 変更履歴機能 を使えば数クリックで過去の状態に復元できます。これはバックオフィス業務において最強の保険です。
Googleスプレッドシートなら、「挿入 > チェックボックス」で簡単にチェックリストが作れます。
また、「条件付き書式」を使って、 支払期限を過ぎているのに入金確認日が空欄の行を赤くする といった設定も簡単です。これにより、視覚的にアラートを出すことができます。
Tech & Chill Labの読者には、ニュースレターやブログを運営している方も多いでしょう。
メディア運営特有の悩みとして、「スポンサー管理」があります。ここでは、案件管理と請求管理をどう連携させるかを解説します。
このセクションでわかること
掲載期間と請求タイミングがズレやすいスポンサー案件を、いかにスマートに管理するか。案件管理表と請求管理表の接続方法を紹介します。
スポンサー案件は「掲載は11月だが、請求は12月」といったズレが頻繁に起きます。これを請求管理表だけで管理しようとすると混乱します。
おすすめは、「案件管理表(掲載スケジュール)」と「請求管理表(お金)」を分けることです。そして、両者を「案件ID」で紐付けます。
このように役割を分けることで、現場(編集者)と経理の連携がスムーズになります。
件数が月に数件なら、ここまでの方法で十分回ります。
しかし、件数が20件、30件と増えてくると、手動入力のミスや、PDF化してメールで送る手間の限界がやってきます。
このセクションでわかること
手動管理のリスクと限界を指摘し、スプレッドシートをデータベースとして活用した「請求書発行・送付の自動化」という次のステップを案内します。
「気をつけて入力する」「ダブルチェックする」といった精神論では、ミスは防げません。 人間は必ずミスをする生き物だからです。
特に、請求金額の桁間違いや、宛先間違いは信用問題に関わります。
管理表が「データベース形式」で整っていれば、ここからの自動化は難しくありません。 ヨハク技研では、以下のような自動化を推奨しています。
これなら、 人間がやるのは「スプレッドシートへの入力」と「最終確認」だけ。 作成や送付の手間はゼロになります。
今回の記事は「請求まわり」にフォーカスしたものですが、実際の現場では、請求と同じくらい「コンテンツ制作フロー」もカオスになりがちです。
記事の企画・執筆・公開・SNS告知までを1枚のボードで回したい場合は、コンテンツ制作ワークフローの設計図で、制作側の業務フローもあわせて整えておくと、請求管理との連携もスムーズになります。
もしあなたが
「今のエクセル管理が限界だが、SaaS を入れるほどではない」 「スプレッドシートを整えて、あわよくば請求書発行まで自動化したい」と考えているなら、一度ヨハク技研の 業務フロー健康診断(無料相談) をご利用ください。
私たちは、高額なシステムの導入ありきではなく、 あなたが使い慣れたスプレッドシートをベースに、小さな自動化を組み込む設計 を得意としています。
これらを、あなたのチームに合わせてご提案します。
A. 毎月の請求件数が数件〜10件程度なら、エクセル(スプレッドシート)管理の方が柔軟でコストもかかりません。
しかし、数十件を超えたり、郵送対応が必要な場合は、freeeやマネーフォワードなどのクラウド会計ソフト(SaaS)の導入を検討すべきタイミングです。ヨハク技研では、その中間の スプレッドシート×自動化 という選択肢も提案しています。
A. 本記事では直接のファイル配布はしていませんが、抜け漏れゼロを目指す!エクセル請求書管理表の正しい作り方の章で、そのままコピーして使える項目(カラム)一覧を公開しています。
これをスプレッドシートの1行目にコピペするだけで、実用的な管理表がすぐに作れます。
「今月の請求分」または「今の期首」から新しいフォーマットで開始し、それ以前のデータは参照用として別ファイル(アーカイブ)で保管しておくのが現実的で効率的です。
まずはこの 3 つを実践してみてください。それだけで、月末の「あの不安」から解放されるはずです。 そして、表が整ったら、その先には「自動化」というさらに快適な世界が待っています。
もし
「自力での設計に自信がない」
「自動化まで一気に進めたい」
と思ったら、いつでも問い合わせページからヨハク技研にお声がけください。
あなたのチームのバックオフィスに「余白」を作り出すお手伝いをさせていただきます。
Tech & Chill Lab では、小さなメディアやコンテンツビジネス向けに、業務フローの棚卸しや、自動化フローの設計・実装をお手伝いしています。
「うちのフローだと何ができそうか」など、ライトな相談からでも大丈夫です。
Author
「つくる以外の時間はもっと減らせる。」をテーマに、小さなチームや個人のための業務フロー設計・自動化・開発環境づくりをしています。Tech & Chill Lab では、スモールビジネスの裏側から個人開発、生活の仕組みづくりまで、「つくる時間を守るための設計図」を静かに共有しています。
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小さなチームや個人事業主に向けて、請求業務効率化の具体的な手順を解説。高価なSaaSに頼らず、スプレッドシートのデータベース化とノーコード自動化(Make等)を組み合わせ、請求漏れや入金確認の手間を劇的に減らすための設計図です。
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